いっしきまさひこBLOG

AI・機械学習関連、Web制作関連、プログラミング関連、旅行記録などなど。一色政彦。

GitHub Sponsors(オープンソース活動のクラウドファンディング)を始めてみた

2019年5月14日から、GitHub Sponsors(GitHubスポンサー)という機能がGitHubで利用可能です。

GitHub Sponsorsの公式サイトはこちら(下の図)

f:id:misshiki:20200110155029p:plain
GitHub Sponsorsの公式ページ(キャプチャして引用)

GitHub Sponsorsはいわば、コードをオープンソースで書く人を金銭的に支援するための機能です。イメージ的には、Kickstarterなどのクラウドファンディングのように、気に入ったプロジェクトや人、活動を金銭的に支援して、活動の成功を見守り、対価(リターン)として何らかのサービスを教授できるサービスです。

オープンソース活動の場合の対価は、通常は物ではなく、「優先的にGitHub Issuesやプルリクエストなどに対応してもらう」といった「権利」提供型サービスになるのかなと思います。どれくらいの金額支援に対してはどれくらいのサービスを提供するかはTierという形で、オープンソース開発者/プロジェクト側で作成します。特にTierの基準は用意されていないので、近しいプロジェクトの事例などを参考にしてオリジナルものを作る必要があります。

通常のクラウドファンディングと違うのは、支援が1回きりではなく、毎月で、止めるまで継続されるサブスクリプション制であるという点です。1回のみの支援というオプションはあえて用意されていません。

日本でも何人かはやっている人はいるみたいです。ただし多くはなく、広まっていないようですね。というのも、

というスレッドで話題になったのですが、GitHub Sponsorsのサブスクリプションが、ライブパフォーマンスで受け取る「投げ銭」(=コンテンツ提供者への金銭提供)と同じで、そのような投げ銭をネット上で行うことは、資金決済法における「為替取引」に該当する可能性があり、法律的に禁止されているから、という意見が以前から多くあるからではないかなと思います。

ちなみに(投げ銭ではなく)「電子決済」であれば、「資金移動」に該当するので、プラットホーム運営者が資金移動業に登録する必要があるようです(例えば電子決済サービスの「ペイペイ」は資金移動業に登録済みなので、個人間でお金の受け渡しができます。もしくは「資金移動」の法律を回避するために、いったんポイントなどを購入してもらい、そのポイントを人に渡す(例:はてなポイント)という方法を採用するケースも多いみたいです)。ただしGitHub Sponsorsのサブスクリプションは、「電子決済」というより、どちらかというと「投げ銭」に近いと思いますが。むしろ「サブスクリプション」と呼んでいるように、(投げ銭ですらなく)「特典の定期購入」だとは個人的に思っています。

状況はクラウドファンディングに近いと思うので、その解説の一つで「Readyfor(レディーフォー): クラウドファンディングの種類」(下の図)を見ると、

f:id:misshiki:20200110155057p:plain
Readyforのクラウドファンディングの種類ページ(キャプチャして引用)

GitHub Sponsorsのサブスクリプションは、先ほど書いたように「権利の定期購入」と見るのならば「購入型」に該当するのかなと考えています。一切の特典(権利)を渡さず、手紙やメールでお礼を言うぐらいであれば「寄付型」なのかなと思っています。

※以上、思っていることを書きましたが、法律については無知なので、詳しくは法律家に相談してみてください。わたしは本稿の内容に対して一切の責任を取りません。ちなみに自分も「弁護士ドットコム: ソフトウェア開発者への金銭的支援と、資金決済法について」に質問してみましたが、「クラウドファンディングのような方法で資金を集める場合に、……、対価が質問にあるような特典(例:毎月2000円なら開発者側ページに『名前/ロゴ』が掲載される特典)であれば、金融商品取引法の規制対象とはならず、せいぜい特定商取引法の通信販売の規制対象となるだけだろうと思います。」「寄付や投げ銭であれば、規制はありませんが、寄付を受けた金額が年間で110万円を超えれば、超えた部分に贈与税がかかります。」という回答がつきました(※あくまでネット上にある一つの意見であり、これを読んで取った行動は全て自己責任です。念のため)。

前置きが長かったですが、たまに「無料でこれ提供してくれてありがとう。お金払いたいぐらいだよ」と書き込みされることがあったので、試しに自分もGitHub Sponsorsに申請してみました。で、できたページが下記のリンク先です。

- Sponsor @isshiki on GitHub Sponsors

申請してみたい人向けにもう少し体験を書いておくと、申請してもすぐに始まるわけではなく、承認や口座や、米国での課税を免除してもらうためのW-8BENを電子的に記入して提出する必要など、工程がたくさんありました(参考:「Setting up GitHub Sponsors for your user account - GitHub ヘルプ」)。1カ月近くかかるのを見積もった方がいいです。

しかも申請書類が全て英語で、よく分からない。特に難しかったのは、「What are your pronouns?(あなたの代名詞は何ですか?)」という質問。代名詞って「最強の四番打者」とかかと思ったんだけど、たぶん言葉通りに「My pronouns are he him his」と答えるのだと思います(※確信はないです)。恐らくこれは性別問題と関係していて、男性でも「she her hers」と言ってもらいたい人もいるとかかなと思うので。これは英語を文化面も含めて知らないと答えられないですよね。

もう一つがW-8BENで、赤枠で囲まれている欄だけ記入すればよいと思います。記入内容は「( 2019最新版) W8benの書き方完全ガイド / マイナンバー対応 | 稼ぎたい人のためのストックフォト副業ログ」を参考にしました。

GitHub Sponsorsは海外でやっている人でもそこまで多くの支援者が付いているわけではないので、現状のままだと流行ることなく終わりそうという気がしてしまいますね。自分も誰も付かないだろうな...。

それよりも日本人はGitHubスターをあまりつけないらしくて、それでも米国などとの差が出ているって何かで読んだのですが、「まずはみんな気に入ったら気軽にGitHubスターを押す習慣を持とう」という運動が日本で始まればいいなと思っています。自分もほとんどスター押してないから人のことは言えないです。

第4回 Jetsonユーザー会 「Jetson Nano超入門」著者パネルディスカッション+LT大会 聴講ノート

※これはセミナー聴講時の個人的なノートをそのまま公開したものです。誤字誤植や勘違いがある可能性があるのでご了承ください。

第4回 Jetsonユーザー会 「Jetson Nano超入門」著者パネルディスカッション+LT大会 - connpass に参加しました。

19:40  NVIDIA社から

19:50 発表開始 (30分)パネルディスカッション :

Jetsonで何をさせたらおもしろい?

  • メディアプレイヤー
  • 物体検出は多いが、3Dをグリグリ動かすアプリケーション
  • 画像のディープラーニングでの検出・認識など。ラズパイカメラが標準で使えるので
  • GPIOはラズパイを意識した作りなので、逆にラズパイにできないことを

Jetson nanoや後継Xavier NXなどのエッジAIデバイスの可能性は?

  • センサーではないものが検出できる。例えば人の表情でまぶしそうだから照明を調整するなど
  • 推論はデバイスにやらせるという分業が進んでいく。モデルを作る人とアプリを作り人は別に
  • 個人で安くて手に入るので、それを活かして、教育的な活用を進めてほしい
  • 自分だけのカメラが作れるのでは。AIで画風変化とか
  • PHS(プリントしてはんこシテスキャンする)の自動化?

AIエッジデバイスの産業用途

  • Jetson nanoをオススメしているが、AIの解釈性の問題などで実現にいたらない。ミッションクリティカルな場面では難しいだろうが、こうすれば使えるなどのユースケースは必要
  • TX1/TX2ではフルオートメーション、AI監視カメラ、インフラ管理などでの活用は多いが、あまり公開される実例情報としては世の中に出てきにくい
  • エッジコンピューティングについては日本が世界をリードしてほしい
  • AIを使いこなす会社が結局は伸びていくのではないかと思う

Jetsonシリーズに期待すること

  • 継続的に提供してほしい。JetPackの提供が終わってしまうなどがないように(JetPackのアップデートは最新のものを使っておくべき)
  • 情報が少ないのが不満
  • 少し高い。普及することで安くなるのでは
  • ラズパイと比べると、使える周辺機器が少ない。一工夫しないと使えないので、今後は使えるものが増えるとうれしい
  • オーディオ関係が弱い。ラズパイと同じくらい気軽に使いたい
  • MicroSDカードの差し替えが頻繁だと壊れやすいので、MicroSDカードの延長ケーブルを使うとよい

汎用AIは実現するのか?

  • 汎用AIといわれてもイメージできない
  • ドラえもんを作るのは10年後はまだできないと思うけど…
  • このまま技術を積み重ねていけばできるのではないのか
  • 中身は計算式なので、コンピューティングパワーがまだまだ足りないので、しばらく無理だと思う
  • 生きているうちにドラえもんを見てみたいが、今は虫みたいなものなので、もうワンステップした別理論が必要。だから100年単位が必要だと思う
  • ドラえもんが出してくれるアイテムの方に興味がある。ほんにゃくこんにゃくなど
  • 複数のセンサーやAIを組み合わせる「マルチモーダル」なAIロボットであれば5年後にはできるだろう

20:40 LT (3枠)(5分)USAHIROU Jetson NanoでJetbotならぬROS対応のRotsonを作ったよ

  • Jetson Nano+ROS=Rotson

(5分)LT枠: Deep Stream系

資料だけではわかりにくい点もあるかと思いますので、話した内容等は別途ブログにまとめる予定です

(5分)LT枠: Jetson NanoとGR-ROSEで始めるROS2

LT枠全体

良資料の紹介「『ダメな科学』を見分けるための大まかな指針」

ネットサーフィン中にたまたま見つけた資料ですが、良いと思ったので個人的な備忘録も含めての紹介です。

「『ダメな科学』を見分けるための大まかな指針」というポスターを見たことがあるでしょうか? 2014年とちょっと古いですが...。以下は上記の「日本語化のソース」から引用したポスターです。両方とも「Creative Commons — 表示 - 非営利 - 改変禁止」に従って再配布可能のようです(詳しくは上記のリンク先を確認してください)。

「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針

うさうさメモに、それぞれの項目の内容が詳しく解説されています。下記リンク先を参照してください。

統計検定2級に合格! 私の勉強方法と試験対策

ちょっとずつ閲覧数が増えてきたので、2級合格までに実践してきた勉強法と試験対策について大幅に追記しました(2020年3月24日)。元々書いていた「 2級合格体験と今後の目標」は後ろに回しました。

理解するための勉強方法

私の場合、理解するための勉強と試験対策は違う勉強の仕方が必要だと感じました。まずは2~3カ月かけて基礎をしっかりと理解すること。その根幹となるのが、正規分布関連から、カイ二乗検定、T検定までを完全に理解することです。これを行うために、以下の順番で勉強しました。特に「完全独習 統計学入門」は真剣に読み込みました。

予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」【確率統計】再生リスト

ここまでで50%ぐらいの勉強が完了です。この後、次の公式書籍にざっと目を通して、試験を受けるには全然知識が足りないことに慌てました。

基本的には、あまり評判の良くないこの教科書で勉強しましたが、補足で下記の動画やWeb記事を読んだりしました。

とりあえず勉強はここまでで100%です。一通り理解したら、すぐに試験対策に入った方がいいです。試験対策の期間が長いほど有利です。

試験対策

試験対策で最初に取り組んだのが、下記の書籍です。Kindle Unlimitedにより無料で読めたからです。タダだからと思って何気に読み始めたら、これが非常に秀逸でした。実は、上記の勉強の後半で足りなかった部分の大半はこの本で身に付けたといっても過言ではないです。

でも試験対策に乗り出したのが、試験の2週間前で、もっと効率的に学びたい、と思っていたところ、下記の動画コンテンツ(いずれも Yuya.K_ASN 氏のYouTubeチャンネル)を見つけました。これが上記の試験対策本を超えて優秀でした。これを試験の2カ月前から繰り返し視聴すれば、合格は間違いないと思います。

※これらが扱っているのは過去問です。視聴するには、過去問の本も購入する必要があります。

また、Yuya.K_ASN 氏のYouTube動画では、「どの問題でどの検定を使うか」などの資料に、下記の本を使っていますね。一応、私も買いましたが、演習問題は解いてないです...。

もし最短かつ最安で2級に受かることだけを考えるなら、過去問を買って、Yuya.K_ASN 氏のYouTubeチャンネルの「【2017年6月】統計検定2級解説」再生リストだけを繰り返し視聴すれば、余裕で受かると思います。でも、目的としてしっかりと統計学を身に付けたい場合は、地道に勉強していくことをお勧めします。

以上、自分が感じている「これを勉強したら合格できるよ」という内容の暴露です。せっかく方法を公開したので、誰かのお役に立てればうれしいです。

2級合格体験と今後の目標

2019年11月24日(日曜日)に統計検定2級を受験して合格。本日、Webで合格発表がありました。

AI・機械学習をやるうえで必須かと思い、今年の6月ぐらいから徐々に統計学の勉強を始めました。 統計学を学んでみると、「機械学習のこれは、統計学のこれのことか」と気付くことが多く、勉強して良かったと思っています。

もう一つの収穫は、統計学の基礎が理解できることと、実践にまで応用できることには開きがあると、実際の問題を解き始めて気付いたことです。 実際に問題を前にすると難しく、まだまだだと反省させられます(慣れてくると、問題パターンから解答パターンがある程度は見えてきてしまう感じがしましたが……たぶんそれは2級レベルだから。準1級、1級はもっと難しいのかと)。

ちなみに2級の合格率は43.7%ぐらいみたいです。→参考:受験データ 2018年6月17日試験|統計検定:Japan Statistical Society Certificate これが準1級の合格率になると20.2%と半分以下にまで下がるのでかなりの難関みたいです。今回のようなつけ刃は通用しないと思うので、もう一度、2級までの内容が完璧になるように、再学習してから、来年6月の準1級の試験に臨みたいと思います。

最終的には1級取得を目指しています。できれば1年後...。

「確率的」を意味する「Stochastic」と「Probabilistic」(Probability)は何が違うか?

「確率的」とは、英語では「stochastic」もしくは「probabilistic」と表現されます。どう使い分ければよいのでしょうか?(どう違うか非常に迷ったのですが、良い資料もヒットしないので、理解したことを書いておきます。)

「何%の確率」(=イベントが発生する可能性の高さ)などという一般的な意味の「確率」は、英語で「probability」です。その関連用語(形容詞化?)が「probabilistic」(確率的)です。確率(probability)に関する数学の一分野は、「確率論」(Probability theory)と呼ばれます。

一方、統計分析において「ランダムに決定するプロセスであること」は、英語で「stochastic」です。日本語では、同じく「確率的」と訳されますが、、むしろ「確率論的」という訳語の方が適切かもしれません。というのも、「stochastic」の「ランダムに決定するプロセス」は、確率論(Probability theory)に基づく考え方であるためです。つまり「stochastic」は、あくまで確率論の一部であり、特に「ランダムであること」が重要なのです。

「probabilistic」には、「ランダム」の意味はなく、シンプルに「イベント発生の可能性であること」だけを示しています。そこが両用語の使い分け基準になるかと思います。

ちなみに、「probabilistic」(確率的)と「probability」(確率)は意味が共通的です。しかし、「stochastic」の名詞は「stochasticity」で「偶然性」という意味になり(いわば「ランダム性」を格好よくした単語で)、「stochastic」(確率論的)と意味が少しズレて、より「ランダムであること」が強調された意味なのでご注意ください。

AWS re:Invent 2019 re:Cap | AI/ML 聴講ノート

※これはセミナー聴講時の個人的なノートをそのまま公開したものです。誤字誤植や勘違いがある可能性があるのでご了承ください。

  • AWS re:Invent 2019 re:Cap | AI/ML - connpass
  • アンケート回答者はプレゼント資料をダウンロードできた(手元に資料あるけど、メモのみ共有)
  • じっくりと説明するというよりは速報的に次々と説明があったので、気になった部分だけメモりました

AWSのAIサービスに関するアップデート

Amazon Rekognition Custom Labels

Amazon Comprehend

  • 日本語対応

Amazon Transcribe

  • 日本語対応

Amazon Transcribe Medical

  • 医療向けの高精度な音声文字起こしサービス
  • まだ英語のみ

Amazon Kendra

  • 機械学習を利用した高精度な文書検索
  • まだ英語のみ

Amazon Fraud Detector

  • 機械学習による不正検知サービス

Amazon CodeGuru

  • コードレビューの自動化と性能改善のためのガイドを行う開発者向けのサービス

Contact Lens for Amazon Connect

  • コンタクトセンターにおける業務をAIで効率化するためのサービス

AWSの機械学習ハンズオンのためのサービス

DeepComposer

DeepRacer

  • ステレオカメラなどいろいろアップデート

Amazon SageMakerのアップデート

Amazon SageMaker Studio

  • SageMakerの各機能を呼び出せるWeb上の統合開発環境
  • 対応リージョン:オハイオ

Amazon SageMaker Autopilot

  • 表データに対して分類/予測を行う機械学習のAutoML機能
  • 東京リージョンでも利用可能

Amazon SageMaker Processing

  • SageMaker Pricessing SDK
  • データの前処理/後処理をバッチで行える機能

Amazon SageMaker Debugger

  • SageMaker Debugger SDK
  • 学習時の異常出力などの問題(勾配の消失など)を検出
  • TensorFlow、Keras、Apache MXNet、PyTorch、XGBoost などに対応
  • テンソルの急激な増加や消滅(NaNまたはゼロ値に達するパラメーター)、勾配の爆発や消滅、変化しない損失などの一般的な問題

Amazon SageMaker Experiments

  • SageMaker Experiments SDK
  • 学習を改善するための試行錯誤を支援する機能

Amazon SageMaker Model Monitor

  • MLモデルの品質を維持する機能

Amazon Augumented AI

  • 推論結果を人間が修正するワークフローを構築する機能

Amazon SageMaker Operators for Kubernetes

Deep Graph Library (DGL) がSageMakerで利用可能

AWS Step Functions Data Science SDK

Amazon AthenaでSQLクエリからML実行

Amazon Aurora Machine Learning

マルチモデルエンドポイント (MME) が利用可能に

MLインフラストラクチャのアップデート

Inf1インスタンス

  • 機械学習の推論を低レイテンシかつ安価に実現する推論用チップ「AWS Inferentia」を搭載した新インスタンス

AWS Inferentia

  • AWSによる独自設計推論プロセッサ

AWS Neuron SDK

  • AWS Inferentiaで実行するにはコンパイルが必要

Amazon Braket

読書感想『やり抜く力 GRIT(グリット)』

書籍紹介

 2016年9月出版の本ですが、audiobook.jpで人気だったので聴いて&読んでみました。Audible版やKindle版もあります。

 オーディオブックの再生時間は12時間6分。そこそこ多い文量です。

概要紹介と感想

 内容としては、才能や能力よりも「やり抜く力」(=「GRIT(グリット)」と呼ぶ)の方が大事ということを、研究例を用いたりしながら解説する本です。

  • PART 1 「やり抜く力(グリット)」とは何か? なぞそれが重要なのか?
  • PART 2 「やり抜く力(グリット)」を内側から伸ばす
  • PART 3 「やり抜く力(グリット)」を外側から伸ばす

という3部構成で、パート1で理論を知り、パート2とパート3で理論の実践方法について言及しています。

 理論については納得のいく内容だと思います。粘り強く頑張る人が、結局は活躍していくものだと思います。しかし人はとかく、「あの人は頭が良い」「私には才能がない」などと、無意識のうちに「才能・能力の高い/低い」を重要視してしまいます。IQや授業の理解度とかを見て、「この人はこの人よりすごい」というように判断しがちです。しかし最終的に勉強ができるようになるのは、理解が悪くてもしつこく質問する子供だったり、最初は「この人は才能がないな」と思った人でもその後の粘り強い頑張りで人並み以上に成長していったりします。グリットの高さ(=グリッドスコア)こそ、人の活躍可能性を測れる指標ではないかと。そう思わされます。

 よくよく考えて見ると「そりゃそうだよね」と思う内容です。なので内容に新規性はありません。むしろあらためてそこに気付かせてくれる本なのかなと思いました。

 実践については、子育て、子供への教育についての説明が印象的でした。子供への教育方法について考えてみたいと思う人は、参考までに手に取ってよい本だと思います。

 ただし、実践のための結論や具体的な手法を提示しているわけではないと思います。よって、自分で「グリットを伸ばす方法」を考えて、自分で実践手法にまで落とし込む必要はあります。もちろん誰にでもフィットする銀の弾丸などないのだろうから、それは当然だろうと思いますが、「結論や手法が教えて欲しい。何も考えずにその通りにやるから」っていう人には向かない本かなと思います。

 以下、引用しながら、私自身が気に入った内容をまとめていきます。

なぜ「やり抜く力」が重要か?

 わたし自身は何にも才能があるわけではないけれでも、「考えれば思い当たるところがあるよな」と思ったのが次の文章(引用)です。

だが、成功の要因はそれだけではなかったのだ。インタビューで多くの人が語ったのは、ずば抜けた才能に恵まれながらも、能力をじゅうぶんに発揮しないうちに、挫折したり、興味をなくしたりして辞めてしまい、周囲を驚かせた人たちの話だった。
失敗しても挫けずに努力を続けるのは――どう考えてもたやすいことではないが――きわめて重要らしかった。「調子のいいときは、やたらと意気込んでがんばる人もいますが、そういう人はちょっとつまずいただけで、とたんに挫けてしまうんです」

 子供の時、水泳が得意だったけど、途中で辞めました。その後、小学校で水泳の選手にもなったけど、そこそこ頑張っていたと思いますが、それもそこそこ。水泳がすごく好きというわけでもなかったのだけど、上の文章の内容はちょっと当てはまるのかなぁとは思います。

 次の文章もあるあるかもしれません。

どうやら、ただ数学に向いているだけではよい成績は取れないらしい。数学の才能があるからといって、数学の成績がよいとは限らないのだ。
これは私にとって驚きだった。一般的に数学は、数学的な才能のある生徒ほどよくできて、数学の苦手な生徒との差が著しいと考えられている。正直なところ、私も最初はそう思っていた。呑み込みの速い生徒は、つねにほかの生徒たちよりもできるはずだと思っていた。それどころか、もともと数学の得意な生徒とほかの生徒たちの成績の差は、大きくなるいっぽうだと思っていた。

 しつこく粘り強く数学に取り組む人が、結局は成績が良いようです。「僕は頭が悪いから分からない、できない」と言う人はやはり、数学の成績が良い人よりも、数学の勉強を真剣に長い時間やっていないのではないかと思います。

 このような才能を重要視して、努力を軽視するのは、ついついやってしまいがちです。例えば次の文章は、全国調査の質問とのことです。

「成功するためには、才能と努力のどちらがより重要だと思いますか?」
アメリカ人の場合、「努力」と答える人は「才能」と答える人のおよそ2倍だ。運動能力に関する質問でも、同じような結果が出る。では、つぎの質問はどうだろう?
「新しい従業員を雇うとします。知的能力が高いことと、勤勉であることでは、どちらのほうが重要だと思いますか?」
この場合、「勤勉であること」と答える人は、「知的能力が高いこと」と答える人の5倍近くにものぼる。

 いや分かりますよね。例えば自分が採用担当で、人工知能エンジニアを雇いたい場合に、「東京大学の博士課程出身で、こんなことができます」という人と、「とにかく独学で頑張った結果、こんなことができます」という人がいたら、「こんなこと」が同じレベルだとしたら、やっぱり前者を優先してしまうのではないかと。無意識のうちに「才能」の方を重要視してしまう。でも本当は、上で書いた通り、やり抜く力が強い方がより良い結果を出しやすい。難しいもんです。

才能と努力による「達成」の方程式

 著者は「達成」に関する論文を書いたそうです。その論文には、「達成」に至るまでの過程を説明する単純な方程式が示されているとのこと(図は自作して引用)。

f:id:misshiki:20191204195504p:plain
「達成」を得るには「努力」が2回影響する

「才能」とは、努力によってスキルが上達する速さのこと。
「スキル」は、「努力」によって培われる。
「達成」は、習得したスキルを活用することによって表れる成果のことだ。

 つまり、才能をバネに努力すれば効率的にスキルが身につく。通常はこれが目立つので才能重視になるのでしょう。しかしそれだけではないというのが著者の主張だと思います。

 スキルを使ってさらに努力すること。これによって人は生産的になり、達成をつかめるのだと。「才能」と「努力」を区別して、「スキル」に対しても「努力」が必要だと考えるのが大事なようです。

「情熱」と「粘り強さ」を発揮して目標を達成する方法

 ここで「グリットスコア」という「やり抜く力」の計測方法が出てきますが、ぜひ本を買うなどして確かめてみてください。

 で、「やり抜く力」を高めるにはどうすればよいか。著者はウォーレン・バフェット氏の発言を紹介して「優先順位を決めるための3段階方式」を示しています。

  1. 仕事の目標を25個、紙に書き出す。
  2. 自分にとってなにが重要かよく考え、もっとも重要な5つの目標にマルをつける(5個を超えてはならない)。
  3. マルをつけなかった20個の目標を目に焼き付ける。そしてそれらの目標には、今後は絶対に関わらないようにする。なぜなら気が散るからだ。よけいなことに時間とエネルギーを取られてしまい、もっとも重要な目標に集中できなくなってしまう。

 これは「やらないこと」を決める作業ですね。

 これを著者はアレンジして、

 4. 「これらの目標は、共通の目標にどれくらい貢献するか」と考える。

という項目を追加し、目標をピラミッド形に描くことを推奨しています(図はカスタマイズ版を自作して引用)。

f:id:misshiki:20191204195547p:plain
左にいくほど重要な目標になる

 ややもすれば中位の目標だらけになってしまいます。キモは、「最上位の目標」を決めることです。

 そしてピラミッドから外れる関係のない目標は削っていきます。何でも必死に頑張っても意味がないですから。この「中位の目標」が5個でよいと思います。

 そして中位の目標を達成するための具体的なTODOリストを「下位の目標」として記載すればOKだと思います。このピラミッドによって、すべての目標が関連性を持つことになります。

スキルを伸ばす方法

 スキルを伸ばすには、最上位の目標に向かって努力を粘り強く続けるしかないと思います。しかしそれだけでは不十分です。効率よくスキルを高めるにはどうすればよいか。これに関して著者は次のようなヒントを書いています。

ふつうの人びとと違って、エキスパートたちは、ただ何千時間もの練習を積み重ねているだけでなく、エリクソン(認知心理学者のアンダース・エリクソン氏)のいう「意図的な練習」(deliberate practice)を行っている。
1. ある一点に的を絞って、ストレッチ目標〔高めの目標〕を設定する。
2. しっかりと集中して、努力を惜しまずに、ストレッチ目標の達成を目指す。
3. 改善すべき点がわかったあとは、うまくできるまで何度でも繰り返し練習する。
では……そのあとは? ストレッチ目標を達成したあとは、どうするのだろう?
エキスパートたちは新たなストレッチ目標を設定し、弱点の克服に努める。小さな弱点の克服をこつこつと積む重ねていくことが、驚異的な熟練の境地に至る道なのだ。

 これをどう読み解くかは人それぞれだと思いますが、わたしは「改善」と「弱点克服」をコツコツとやっていことが鍵なのだろうなと感じました。自分は満遍なく全部やってしまうことが多いです。しかし、弱点克服に集中して、弱いところを潰していくように努力する方がより良いと、この本を受けて考えています。わたしはそのように、上記の引用部分を読み解きました。

 弱点は取り組むのが大変だから弱点になっている可能性が高いです。著者は「ラクな『練習』はいくら続けても意味がない」と言及しています。

 著者は日本語の「七転び八起き」という言葉が好きだそうです。その精神で努力し続けるようにしたいですね。

この本のオススメ度

 スポーツ選手の話も出てきますが、頻繁に子供の教育の話が出てきます。というか私の印象によく残っています。よって、前述したことの繰り返しですが、「子供の教育はどうすればよいか」と考えている人が、思考材料として読みたいというなら最適ではないかと思います。

 繰り返しますが、とかく人は努力ではなく、才能を優先します。子供も同じで、例えば算数の成績が思ったよりも悪いときに、

「努力が足りなかったから」ではなく、「能力が足りなかったから」失敗したと思う生徒

が多いのではないでしょうか。人の努力は見えにくいものです。だから、能力のせいにしてしまう。しかし「能力が低い」と考えた子どもたちは「無力感」にさいなまれるようになり、さらに努力(この場合は算数の勉強)をしなくなってしまいます。

 よって逆に成績が良かったときにも、能力・才能ではなく努力を褒めるべきです。例えば「算数ができるね! 頭良いね、さすが」ではなく、「よく努力したね、すばらしい」のように。このような「成長思考」「やり抜く力」を伸ばす表現が、本書の中でまとめられていますので、ぜひ購入して確かめてみてください。