いっしきまさひこBLOG

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読書感想『ブチ抜く力 ―― 一つの事に魂を売れ』

書籍紹介

 2019年3月出版で約1年前の本ですが、audiobook.jpのセールで買えたので、2019年末に聴いて&読んでみました。Amazonなどでの読者評価もすごく高いです。

 オーディオブックの再生時間は7時間7分。比較的短めです。

概要紹介と感想

 内容としては、非常にシンプルで「何かを為すには、それだけに心血を注げ。それ以外の一切は切り捨てろ」ということです。当たり前のことですが、それが多くの人はできていないよね、ということです。それを与沢さん流に言うと、「ブチ抜く」「一つの事に魂を売れ」という表現になります。ちょっと言葉が汚く聞こえますが、そこがインパクトを生んでいますね。内容自体は紳士的だと思います。

 【目次】は次のとおりです。

  • 第1章◆基本の法則: 「すべての根底にある大原則」
  • 第2章◆ビジネスの法則: 「人と群れるな。誰とも組まず、単独で突っ走れ! 」
  • 第3章◆投資の成功法則: 「勝負は、チャンスが来る前から始まっている」
  • 第4章◆健康の法則: 「一日一日を全力で。その積み重ねが大きな結果に繋がる」
  • 第5章◆情報収集の法則: 「情報収集も3週間。「一人突っ込み」を繰り返し、センターピンを掴まえろ! 」
  • 第6章◆未来予測の法則: 「これからの世界で起きる事を予測し、逆算して今から動こう!

 エッセンスは第1章に詰まっていて、必読です。取りあえずここだけ読んでもよいです。

 ほとんどの人は何らかの仕事をしいてると思うので、第2章も参考になると思います。

 第3章と第4章は、与沢氏自身の直近の実践例です。投資をやっていない人とかダイエットをしていない人にはあまり興味がない話かもしれません。特に第4章はスキップしていい内容かなと……。

 第5章は「センターピン」(後述)を掴む方法を語っています。ここも読んだ方がいいです。

 第6章はどういう姿勢でこれから生きていくべきかという話でしたが、そこまでのインパクトはないですね。

 与沢氏のように、他全部を捨て去って、1つだけをやる、ってことは意外になかなか難しい。それを自分だけの力でやるのは大変です。自分自身もなかなか苦手です。テストの前とか締切の前とかなら専念できるのですが。そこを考えると与沢氏はすごいですね。

 例として、話は脱線しますが、2020年4月に「42 Tokyo(パリ発のエンジニア養成機関)」という次世代型の学校が開講します。その入学試験には、「Piscine(ピシン)」という独特の試験が行われています。Piscineは「スイミングプール」の意味で、つまり約1カ月間かけて入学試験を「泳ぎ切れるか」を測定する試験だそうです。で、私自身がちょっと興味を持って受験者のツイートなどを眺めているのですが、「1日平均、約9時間をPicscineに費やしている」という旨のツイートを見ました。それを見て思ったのが、たった1カ月で約270時間もやれるなら、多くの分野でもうまくいく気がします。これは与沢氏の“ブチ抜く”と同じことだと思いました。

 自己啓発系の本で流行った「一万時間の法則」も同じことですよね。毎日9時間、1つのことに専念すれば、3年×365日×9時間=9855時間(約1万時間)です。これだけやれば、どんな分野でも平均から頭一つ飛び抜けた存在に余裕でなれるでしょう。だけどその1万時間を10年かけてやったとしたら意味が無い。できるだけ早く、短期間で、その量を鬼のようにこなさなければ、大多数と同じ平均レベルに甘んじるのだと思います。与沢氏は、そういうことを“一つの事に魂を売れ”というメッセージで伝えるのだと思いました。

 与沢氏の経歴については、ヒルズ時代の「秒速」から、転落、シンガポールで投資家で大成功まで、知っていましたが、そこまでできるということは、やっぱり持っている意識や信念が他の人と大きく違うということでしょうし。その秘密がこの本には、非常にシンプルなメッセージで書かれていると思いました。

 これから何かを成し遂げたい人、やる気を上げたい人は、特に若い人は、この本から何か感じるものがあるのではないかと思います。そういった人にはお勧めです。

 以下、引用しながら、私自身が気に入った内容をまとめていきます。

ルール 1: 一つの事に魂を売り、ブチ抜いていこう。

 この本は出だしが強烈で、このメッセージだけでこの本1冊すべてを語っていると思います。それが次に引用した2文です。

 たった一つの結果のために、魂を売る。
 皆さんは、そう言い切れるくらいに何かをやり切った経験はあるでしょうか?

 個人的には一時的にはあると言えばあると思います。例えば大学受験した高校3年生と予備校1年の2年間。同じような各種テスト前の勉強とか。原稿を締切日前に書き上げるとか。

 他には、プログラミングやその周辺のITの勉強もすごくやりました。大学を卒業してからITエンジニア(プログラマー)になりました。会社から帰宅して、夜の3時か4時くらいまでIT書籍を読みあさっていました。だから毎日、睡眠時間は3時間程度。ジュンク堂(福岡天神)にあるITエンジニア系本棚の端から端までを主要な本は全部読む気でいました。それを4年間続けました。たぶんこれは「一万時間の法則」であり、与沢氏の言う“一つの事に魂を売ってブチ抜く”に近いかなと思います。

 ここまでやらないと、「毎日9時間それに専念する」というのはできないと思います(※もちろん、学校も仕事も辞めれば「1日中それだけしかやらない」とできるかもだけど、そういう環境はなかなか作り出せないだろうし)。それだけ尋常ではない。若くないとなかなかできないことだと思います。

 与沢氏は、「どうしたら与沢氏のように成功できるんですか?」という質問をよく受けるそうですが、次のように答えています。

 私が実践してきた事は、非常にシンプルです。それは「とにかく一つの目標に全力を注ぎ込み、結果を出すまでやめない」という事。

 これによって、「一つの事に徹底的に集中するから短い時間で上手になり、誰よりも突き抜けることができた」と思っているそうです。

 だけど“一つの事に魂を売る”のはなかなか難しい。誰しもやることがいっぱいですし、そこまで1つのことに時間を掛けられないですから。でも、「それではダメだ」と与沢氏は伝えてきます。言うなれば、これは「飛行機の離陸」と同じなのだと。

 ただ、多くの人は地面から離陸する前に走行を停止してしまう。すると、苦しい状況がずっと続くことになるのです。

 これは何となく直感的に分かります。完全に振り切れていない状態、フルスロットルではない状態、他の全部を遮断して捨て切れていない状態、そんなストイックになりきれていない状態であれば、その他大勢の中から飛び抜けるのは難しいですよね。分かっていても、なかなかできない。与沢氏は「ストイックでいるために、人は何らかの代償を払わなければならない」と語ります。与沢氏はそのあたりの覚悟の仕方がうまいのでしょう。何よりもルール2のような信念を持っていることが大きいのだと思いました。

ルール 2: 最短・最速で圧倒的な結果を出す

 与沢氏は、「なぜ『最短・最強』こそが、最強のソリューションになり得るのか」という理由について、次の3つを挙げています(部分部分を引用)。

  1. 短期間だから人は集中できる
  2. 結果が早く出るので正しい方法論に辿り着きやすい
  3. 最短・最速で結果を出すと「ブチ抜いた存在になれる」

 1と3はこれまでに説明した内容の強調ですね。2は与沢氏独自の理論だと思います。そのやり方はルール4で説明されています(※ルール3の紹介はスキップします)。

 ルール2の最後に、読者/リスナーに対して、次のようにアドバイスしています。

 これまでの常識は全部取り払って、「未だかつてない最短・最速」での目標達成プランを考え、実践してみて下さい。

ルール 4: センターピンを掴め。そして3週間、徹底的にやり切れ。

 ここでまた、インパクトのあるキーワードを出してきました。それが「センターピン」。この用語は、この本の中でタイトル以外で最も大切なキーワードだと感じました。自分はこれについてこれまで意識してきたことがなかったので、私がこの本を高評価する一番のポイントでもあります。個人的に学びがありました。

 では「センターピン」とは何なのか? 「ボウリングでいう真ん中のピンの事」とのこと。どういうことかというと、「その物事のセンターピンは何かという事」を考えること、要するに「『物事の本質は何か』を考える事」が大切なのだと与沢氏は主張します。

 では「なぜそれが大切か?」というと、与沢氏は次のように語ります。

センターピンとなるたった一つの“物事の本質”を的確に捉えさえすれば、物事は想像以上に上手くいきます。

 だからこそ、「目標を達成させるために最初にやる事」なのだと与沢氏は説きます。そして「一つのセンターピンを設定したら、最低3週間は続けてみて下さい」とアドバイスしています。

 これを読むと、上記で説明した私の「プログラミングやその周辺のITの勉強」は間違っている気がしました。センターピンが掴めていない。だからこそ最短・最速で結果を出せないのだと(結果を出せたのか出せてないのか、自分でもよく分からないけども)。与沢氏はこのあたりの努力が的確なのが良いと思います。的確になるように自分なりの理論を持っている。それが与沢氏の強さを生み出しているのだと感じます。見習いたいです。

 簡単に「センターピンを掴む」と言っても、はっきり言って「それが簡単にできたら苦労しないよ」っていう人は少なくないと思います。与沢氏はこれについても、具体的なアドバイスを用意してくれています。

 実は頭の良い人ほど、この「一つに絞る」という作業が苦手です。
 頭の良い人は物事の本質「らしきもの」を掴むのが得意なので、センターピンと思しきものを「これも、あれも」といくつも見つけてしまうのです。

 うわー。耳が痛い。頭は悪いけど、分かるわ。基本的に100%正しいとかないだろうから、「大事なのはこの3つです」とかやってしまいがちです。しかし与沢氏からすれば、これこそが「失敗のもと」で、「最短・最速を不可能にする最大の理由」とのことです。与沢氏は次のようにも説明します。

 センターピン「らしきもの」がたくさんあると、一つひとつの方法に費やす力が分散してしまうので、結果としては中途半端なものになりがちです。

 本当によく分かります。自分自身もやっていることがいっぱいあって、2019年の例では英語・TOEICやったり数学・統計学やったり機械学習・ディープラーニングやったり投資やったり音楽/映画の観賞や読書したり小説書いたり、本当にたくさんやっています。だからやっぱり時間の不足、力の分散を感じていました。ただし、1つに絞って集中し過ぎると疲れてきて、気分転換に他のことも始めてしまいます。そういうところがダメだなって、2019年末にこの本を読んで感じました。だからこそ、2020年は月単位で完全に1つに絞り、与沢流でやってみようかと思っています。たった3週間であれば、毎日9時間頑張れるでしょう? ちなみに個人的には2月は統計学の多変量解析をやっています。と言いつつもこのブログ記事も書いてしまっているので、ダメですね……。ちなみに個人ではなく仕事は、ディープラーニングのライブラリにフォーカスして深掘りしています。

 見習うべき与沢氏のアドバイスは次のとおりです。

 だから、私がセンターピンを決めた時は、必ず他の情報はシャットアウト。一度決めたら、とにかく馬鹿になって愚直にやり抜く。一度ルールを決めたら、もはや考える必要はないのです。

 これだけでもかなり排他的な雰囲気ですが、与沢氏の考えはもっともっと強烈です。それがルール5。

ルール 5: 成功したいなら、人の意見は聞かず、ストイックに突き進め。

 ストイックであろうとする際に、大きな障壁になるのが「他人の意見」です。
……でも、その「意見」の大半は無意味です。
 その理由は「誰かにとっては成功した方法であっても、それが自分自身に適用できるとは限らない」からです。

 まぁ人の意見なんて、しょせん「あなたは私の人生すべての責任を取ってくれるんですか?」というのはあります。何だかんだ言う人は多いけど、「じゃあ、全部面倒見てくれるんですか?」っていう。そういう覚悟もないのに気軽に言ってるだけなので、そこまでまともに聞く必要はないなと思います。自分の人生の責任は自分に降りかかってくるのだから、それがどれだけ人類至上最高の賢人であっても、例えばたとえ孔子であったとしても、「責任を取ってくれないのなら、参考にしたとしても、従う必要などはない」と思うので、与沢氏に賛成です。

 与沢氏は、他人の意見をうのみにするのではなく、自分で考えることが大切だと説きます。

 私が言いたいのは、「人の意見を聞くな」という事ではありません。
 大切なのは、全ての意見に対して、あなたがきちんと自分自身の頭で考え、何が良いかと思える点か、何が悪いと思う点かを自分自身で考え抜いた結果、採用するのかどうかです。

 与沢氏は「『自分で考え、納得した方法』からしか成功は生まれない」と主張しています。確かに確かに。成功者に「具体的にこうしろ」というのを聞いた人が成功できるわけではないでしょう。成功方法は、すべてそれぞれの人が考える必要があるわけです。

 ここまでの内容が第1章の基本部分です。これでやる気になれる人は本は買って手元に置くとよいです。第5章には「3週間でセンターピンを掴む方法」が紹介されています。第1章との関連性も大きいのでこれも引用しながら紹介します。

ルール 29: センターピンを掴むための情報収集・分析は3週間。まずは全体を把握すべく「登場人物」を押さえろ。

 与沢氏は「3週間」という期間を重要視にしているようです。その理由を次のように述べています。

一つの事を集中してやり抜くには、3週間というのが長過ぎず短過ぎず、ちょうどいい期間だからです。

 そしてそれを、1週間ごと3段階に分けることをお勧めしています。その内訳は次のとおりです。ちなみに「フェーズ」名は私が勝手に付けました。

  • 1週目「情報収集」フェーズ: 全体像を把握する
  • 2週目「分析予測」フェーズ: 推論を立てる
  • 3週目「精査決断」フェーズ: センターピンを設定する

 1週目の「全体像を把握する」とは、まずは俯瞰的に全容を押さえてから、物事の細部を理解した方が効率がよい、という考え方です。これは基本的なことなので全面的に納得です。与沢氏がよく使うのが、次の手順とのこと。

「そのテーマにはどんな登場プレイヤーがいるのか」をリサーチする

 これは、例えばビジネス現場や投資の世界であれば、その業界や分野でどんな主要企業があるかを知るということのようです。「リサーチ」というのは「知る」作業を少し大げさに言っていると思います(厳密には「情報収集」くらいの意味でしょう)。ここがまず「全体像を把握する」ということに該当します。

 どれくらい情報収集すればよいのでしょうか? そのヒントを次のように述べています。

 この1週目で学ぶ知識量の目安は、その業界の人なら知っていて当たり前の情報を知るという事。業界に属する人ならば、誰もが知っているレベルの知識を叩き込みましょう。

 2週目は、集めた情報から「推論を立てる」という作業を行います。具体的には次のようにします。

 まずはその業界でトップの存在を中心に、それぞれの登場人物の強みや弱み、特徴を分析していきましょう。

 これは、例えば先ほどと同じくビジネス現場や投資の世界であれば、情報収集した主要企業がなぜ強いのかを自分なりに考えてみるということです。その手法は、統計学などの科学的な手法も使ってもよいと思いますが、普通に論理的に考えればよいでしょう(あるいはある程度なら直感的に考えても良さそうとも思います)。そして、その業界や分野の先行きを予測します。これは「分析&予測」フェーズのことですね。与沢氏はここがキモだと説明しています。

 3週目は、推論を基に「センターピンを設定する」という作業を行います。具体的には次のようにします。

ここがいよいよセンターピンの決断の時です。この2週間に培ってきた知識を基に、自分がセンターピンとして設定するべきは何かを考えましょう。

 「センターピン」とはすなわち、自分がこれから取り組むべき「ただ一つの本質」を指すのでした。そのピンがセンターからズレていたら元も子もありません。誤解や矛盾がないかを「ひたすら自問自答」を繰り返しながら、じっくりと精査していく期間が必要ですよね。そこまでやってから決断を行います。それがこの3週目でやること、つまり「精査&決断」のフェーズということです。

 ところで、「自問自答」はどうやって行えばよいのでしょうか? それについてもヒントを与えてくれています。

 最終的には「自分はAという会社が注目されていくと思う。なぜなら……」と自分の決断に対して、論理的にきちんと人に説明できるレベルかどうかを確認しましょう。

 以上の3週が終わったら実践あるのみ…ではなく、「その前に、ルール30をやらなければならない」と与沢氏は諭します。

ルール 30: 「1人突っ込み」を繰り返し、自説への反論・悪口・対抗記事を論破せよ。

 これは、3週目のセンターピンを常に疑い、検証し続けろ、ということです。与沢氏は語ります。

何度も何度も「この仮説は本当に正しいのか?」と検証しなければいけません。

 具体的な手順は次のとおりです。

自分の決断に対する反証データをひたすら探し、その反証データを自分が論破できるかどうかを自問自答するというもの。反論を探す場所は、テレビでも雑誌でも新聞でもネットでも何でも構いません。

 それでもし、「論破」できなかったら、どうなるのでしょうか?

 もし論破できる確たる根拠が見つからなければ、あなたのセンターピンは間違っている可能性があるので、いま一度、決断を見直してください。

 自分の考えたセンターピンを反証していくのは、苦痛の伴う作業でしょう。与沢氏は、注意点を次のように述べています。

 人間というのは不思議なもので、多くの人は自分が「こうであって欲しい」と思うような情報ばかりを見てしまいます。

 気を付けたいですね。

 あとはルール35まで続きます。本稿では35個のルールのうち、6個だけ(17%分)を、筆者の理解の流れで紹介しました。内容はかなり大ざっぱに抜粋引用したうえに、あくまで私の解釈でしかないので、本稿で興味を持ったら、厳密・正確には本を読んでくださいね。