※これはセミナー聴講時の個人的なノートをそのまま公開したものです。誤字誤植や勘違いがある可能性があるのでご了承ください。
Data Science Fes 2019 クロージングフォーラム|EventRegist(イベントレジスト) に参加しました。
15:00~15:55 セッション1 データ/AIのビジネス活用への勘所
- ファシリテイタ―:杉山俊幸氏(日経BP 総合研究所 主席研究員)
- 自社内のデータ活用は進んできたが、会社間のデータ連携は進んでいない。その解決が今進められている
- インターネットとAIを対比させて20年後に向かって見ると、現在はまだ果実が実る段階ではない。利益を出すことを慌ててはいけない
- インターネットでは、20年前はポータルサイトばかりだったが、今は検索とECで大きな果実が実った
- アワードの審査ポイント「産業・社会的なインパクト」「先進・独自性」「チャレンジ度」
- 大賞=キューピーの「AI食品原材料検査装置」(協調と競争の二軸が大事で、これは他社にも使ってほしい「協調」の技術)
- 「ディープラーニングビジネス活用アワード」大賞はキユーピー:日経クロストレンド
- 特別賞には、パッケージデザインのプラグの「パッケージデザインの好意度スコアを予測するAIサービス」など
- 小川亮氏(プラグ 代表取締役社長 経営管理博士)
- プラグはデザイン+調査の会社(社員70名)
- 各商品のデザインの評価を調査している: 3000人に調査していてお金がが掛かる、誰かがSNSに秘密の商品をアップしてしまうリスク、などなどの問題がある
- この調査をAIで自動化した: かなり良い精度で当てられるように。すべての案件が客観的に評価できる、情報漏えいがない、仮説検証が低コストで何回もできる、マーケターの時間を大切に使える、などなどのメリットがある
- パッケージデザインを11回評価して決めた。AIで今までとやり方が変わる
- 同じ形式で溜めてきたデータだけはある、AIでいけるのではないか(回帰? 分類? 画像処理?)、秋の大きな展示会に取りあえず応募してみた、依頼先を探すも分からなくて高い、大学との共同研究に手紙を出しても無反応か億単位のお金が必要、やばい展示会・・・、社員の1人「俺がやる」
- 独学で勉強開始、本を読む、似た課題のプログラムを当てはめる、速いPCを1台、・・・と地道に進めていき(1000時間くれ)、何とか展示会に間に合った
- 営業を始めて「試してみたい」という声は多いが、「なぜそういう結果になったかを知りたい」という声が多かった。そこでバージョンアップして「どこが好意度に寄与するのか」をヒートマップで表示できるようにした。また、評価コメントのコトバ(イメージワード)を表示できようにした。これからその新版をリリースする予定
- やりたいことを5段階でいうとまだ1.5ぐらい。例えば「どういう言葉で訴求したらいいか」など
- 杉山氏からの質問:
- 「俺がやる」誰も手を挙げなかったら? → どうしていたか分からないが外注しなくて良かった。自社で行うことでノウハウも溜まった
- AIに携わる人員は? → 東京大学との共同研究なども進めているが、実質的に1人の社員がやっている。AIのチームを社内外に作るステージに来ている。学生をアルバイトで雇ったりしてもよい(高専生は特に優秀)
- 学生アルバイトを使うメリットは? → 大学の人は経験値があるので、「理論上はそうではないが、経験上はこうすると速い」などのアドバイスがもらえたりする
- 大企業のAI活用は? → ベンチャーと大企業と大学が組むパターンが増えてきた。そういうフレキシビリティが大切
16:00~16:55氏 セッション2 大学の実践的な教育への取り組みと企業との連携
- ファシリテイタ―:加茂倫明氏(POL代表取締役CEO)
- アカデミアのバックグラウンド: 現役の理系学生(東大工学部を休学中)
- 2016年9月に共同設立者と起業。日本の科学は停滞傾向、論文数は減少中。研究領域には課題が山積み。それを解決するために起業した
- 研究者の可能性を最大化するプラットフォームを創造する
- LabBase: 優秀理系学生の採用プラットフォーム=採用市場に出にくい理系学生を、検索して一本釣りできるサービス
- LabBaseX: 産学連携を加速するナレッジプラットフォーム(2019年3月リリース)=大学を横断して検索
- 課題意識: 産学マッチングの裾野拡大(→データと高性能計算機の提供)、DS(データサイエンス)人材の技能要件の定義明確化/細分化(→適切なジョブマッチング/人材育成)
- 沼田洋一氏(ADKマーケティング・ソリューションズ事業役員/Data Chemistry代表取締役社長)
- ADKは業界第3位の広告会社グループ
- データとは何か?
- 量を集める(=データ)→視点で整理(=情報)→発見(=知性・洞察)→判断(=意思決定)→行動(=アクション)
- ロジック×データ=両方ともあるのが一番良い
- データに関わる業務領域はたくさんある
- 東京大学/武蔵大学社会学部グローバルデータサイエンスコース/早稲大学と連携
- データ提供する意味: 大規模・シングルソース・定期・クリーニング済みのデータでないと研究・勉強できないのかという思いから提供
- ADK生活者総合調査: オリジナルの調査データ
- 企業データを預けることの難しさ: データ漏えいなどを防ぐための契約書など
- Waseda Integraged Research platform(WIRP)という契約面とシステム面を一括サポートする仕組みを使えばよい
- 企業側が求めているもの=課題設定が難しくてそれができる人材がいない。想像力はすべてのビジネスの基礎。データサイエンス+社会科学の想像力が必要とされている
- 小野陽子氏(横浜市立大学データサイエンス学部助教授)
- YCUでの教育プログラム: ドメインへの興味喚起→数学を含めた基礎教育→アルゴリズム+統計+計算機科学→柱となる学問への融合領域→ドメイン・・・
- プロセス: 課題発見→データ定義・収集・加工・分析→解釈・提案→解決
- 学外での学び: セミナー、企業講座、PDS(インターシップ)、共同研究、修士課程で共同研究
- PDS(Practical Data Science): 学部3年生対象。PBL=”Probrem” Based Learning、産学連携など
- PBL実習: 実績追体験型、解決プロセス現在進行型、課題未着手型、課題理解型、その他
- YOKOHAMA D-STEP: 修士レベル相当だが大学院ではない。産官学連携でデータをもらって、実課題解決型PBLを実施
- WiDS: Women in Data Science(スタンフォード、ICMEを中心に始まった)。ゴール=Inspire、Educate、Support。ローカルイベントも実施
- YCUでの教育プログラム: ドメインへの興味喚起→数学を含めた基礎教育→アルゴリズム+統計+計算機科学→柱となる学問への融合領域→ドメイン・・・
- 以下はディスカッション
- 加茂氏:何がデータサイエンティストには大事か?
- 沼田氏:想像力。売っている商品は女性向けが多いので、気持ちが分かる女性のデータサイエンスとに分析してほしい。
- 小野氏:女性でないとというのは幻想かもしない。現場に出るのが大事。
- 沼田氏:現場は大事。シャンプー売場を見てみないと分からない。
- 加茂氏:企業がどうデータサイエンスを使うかを1年生にインプットする意図は?
- 小野氏:微積などの基礎学習ばかりでは、興味が持てないところがあるという理由もある。
- 加茂氏:コミュニケーションに関する課題は?
- 小野氏:私自身は、統計出身だが工学にも興味があったが、工学系からすると統計系は独立とか有位とかじゃなく早く動くものを作れとなると思う。そういう分野ごろに断絶されてる状態ではなく、どの人とも話せるコミュニケーション力が必要になる。WiDSを見ると、統計と計算科学でコミュニケーションが取れない問題は世界共通。
- 加茂氏:大学へのデータ提供で難しい面は?
- 沼田氏:やはり契約面。誰が責任をとるのか? 大学がまとめて責任をとる契約でないと。調査データなので個人データではないと思っているが、個人情報の問題もある。早稲田はWIRPで楽ちん。
- 小野氏:データがある企業に行くの(=インターンシップ)が今のところ安心。
- 加茂氏:文系出身の人が沼田さんのような立ち位置になるには?
- 沼田氏:専門分野の本を10冊ぐらい読む。用語を易しく言い換えできるようになれば大丈夫。
- 小野氏:10冊読めるというのは問題解決したいというドメインへの情熱や興味があったと思う。それがないとどうにもならない。
- 加茂氏:最後に企業にメッセージを。
- 沼田氏: 文系企業でもデータサイエンスの知識を持って話をできるように。妄想力が大事。データは会社にあるが出す側がビビるので契約面を何とかする。
- 小野氏: トレランス、寛容性が大事。コミュニケーションで寛容性がないと、データサイエンスの実施にストップがかかりやすい。
17:05~18:15 セッション3 Data・AI-Readyな社会を私たちが創ってゆくために
- 小澤健祐氏(ディップ AINOW編集長)
- 瀧島勇樹氏(経済産業省 情報技術利用促進課長)
- 菅野流飛氏( 高専キャリア教育研究所代表取締役社長)
- 進行:水無徹郎氏(日経新聞メディアビジネス クロスメディアユニット)
- 水無氏:
- 政府による「人間中心のAI社会原則」の上にあるビジョンが「AI-Readyな社会」
- 経団連による「AI-Ready化ガイドライン」(企業、個人、社会制度・産業基盤)。指針はレベル1~5に分けられている
- 5年後にレベル3まで進行していると過程して、今の状況は? → パネリストそれぞれ見解は分かれた。それを踏まえてディスカッション
- 小澤氏:
- AINOW編集長。「AI業界の広報になりたい」という思いを持っている。テレビやYouTube、講演など多方面で活動中
- AIドルは数学とプログラミングの勉強をしている
- dipという会社はバイトルなどの人材サービスを扱っている。AINOWは「AI」関連の検索で強い
- 2019年: 自然言語処理のBERTが目立った。BERTのGoogle検索への採用など、技術の水平展開だった1年。OCRの技術が確立した
- SIerの限界: B2B2Cモデルにおける課題=今までのAI市場はPoCで成り立っていた
- AI導入の課題: 課題設定(あらゆるフェーズで課題が分からない)。企画←要件定義←PoC←導入と年々遡っている
- 現場特化型(課題把握)の人材育成: 42 Tokyoがオープン
- 課題解決のデジタルシフトが大事ではないか。AI-Readyに向けて
- 2020年はデータ基盤→RPA→AIという形で山を大きくしていくのが理想
- 瀧島氏: デジタルトランスフォーメーション(DX)の展開
- WEFダボス会議:安陪総理スピーチより「作り上げるべき体制はDFFT(データ・フリー・フロー・トラスト)」
- デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か? → デジタル技術を使って、つながり方を変えて、本当にやりたかったことをやる
- ユーザーの気持ちで再構築する、経営とデジタルは一体である、というこにつながる
- Society 5.0: あらゆる段階でのデータ化
- ネクスト・ジェネレーション・ガバメントの在り方: 政府が動画で作った。本もAmazonで売れている
- 19世紀にモノの大量生産体制ができ、インフラ面も作られた
- 20世紀には、政府ですることが増えた(GDPの16%が政府の施策)
- 21世紀次世代は、(小さなユーザーの困ったに対応する)ユーザー起点の政府でないことに問題意識を持っているので、つながり方を変えていくためのプラットフォームを作っていく
- 「テクノロジーをうまく使いこなすために、政府や公共はどうあるべきか」→ DXやAI社会の実現
- 「2025年の崖」=DXの必要性を理解しているが、レガシーシステムもあるので実現できない
- IT投資における日米比較: 日本は守り、米国は攻めのIT投資をしている
- なぜデジタルレディに投資が向かわない? → 部門間、経営者、投資額、人材、危機感などの問題。経営者はオポチュニティを掴めているのか。DXがダメなところに良い人材が入るのか
- 「DX推進指標」の策定、「デジタルガバナンスコード」(社長自らが方針を宣言することにインセンティブ)の検討、IPA未踏IT人材、などの対策をしている
- やはりDX推進にはリーダーシップが大事
- 菅野氏: データ・AI-Readyな社会に備えるためのスタンス考察
- 高専卒業生のイノベーターの価値を見いだし、「高専スタンフォード計画」をスローガンに掲げている
- 高専は現場の実装に強い。未踏スーパークリエイターの高専生の割合は13%、ハッカソンの優勝チームも40%。松尾先生も高専を高く評価している(DCON開催)
- 高専生の行動特性: まず手を動かして結果を出す。不確実性をいったん受け止める
- AI-Readyに求められるスタンスとは? → PoCではなく、動かせる結果を持ってくる
- 完全な構造(業務改善や事業側)と完ぺきなカオス(発明やDX側)の中間にあるのがイノベーション(新規事業)=不確実性を楽しめるメンタリティ(まず動く)=スタンス
- 「20%作る力」+「80%受け入れる力」ができると日本社会が変わる=「できないこと、知らないこと、違うこと」を受け入れる寛容さが社会として必要
- 以下はディスカッション
- 瀧島氏: 官僚組織は決められたことの権化みたいに思われているがスーパーカオスでもある。どうブレンドすればよいのか?
- 瀧島氏: リクルートの上司は問題があったら守ってくれた。そのおかげでできたプロジェクトがあるので感謝している。構造を守る側がそういうスタンスだとパフォーマンスがあがる。
- 小澤氏: カオス側を受け入れるためにはどうすればよいか?
- 菅野氏: 私が言える話でもないが、聞いた話では、トヨタの場合、治外法権の組織を別に作ってしまう、というのは良い。結果が出るまでのリードタイムを許容できるようにする。
- 瀧島氏: 経営者などの工夫が必要な場面はある。
- 小澤氏: そういう組織にするには?
- 瀧島氏: 自由な空間を作ってイノベーションを起こすという宣言を社長がする「デジタルガバナンスコード」が必要。
- 水無氏: 会社が変わるのを待つのではなく、個人ができることは?
- 小澤氏: スタートアップやスピンアウト系が増えているのはそれだから。自分で動いて作ってしまうのが早い。
- 菅野氏: シリコンバレーではアライアンスが大事で、ゆるふわにつながりたいという人が多い。会社に所属するのではなく、契約にしてフラットにするケースが増えている。
- 小澤氏: 大企業では労働基準で働く時間制限もあるので燃え切れない人もいる。
- 瀧島氏: 大企業に入らなければ良い(会場:笑)。若い人から変わっていくのでは。そういう現実から規制を変えていくのが大事。
- 小澤氏: 実際に大企業に勤めている人はどんな感じ?
- 菅野氏: 人間関係が嫌だという人間はいないが、仕事がつまらないという人は多い。大手企業は優秀な人は多いので、仕事自体がチャレンジングであればもっと日本も成長できるはず。
- 瀧島氏: 官僚組織は決められたことの権化みたいに思われているがスーパーカオスでもある。どうブレンドすればよいのか?