スティーブ・バルマー氏が秘密にしている Microsoft のクラウド プラットフォーム戦略 “Red Dog”(コード名)が、PDC 2008 で明らかとされる予定らしいです。“Red Dog”は Windows 向けのクラウド プラットフォームを提供するプロジェクトです。
“Red Dog”を加え、今後、クラウド ベースのプラットフォームを提供するサービス(いわゆるPaaS:Platform as a Service)は、主に以下の3つになると考えられます。
・Google App Engine
・Amazon EC2
・Microsoft “Red Dog”(→Windows Azureという名称になりました)
これらはいずれもユーティリティ コンピューティング、つまり使用容量やトラフィックに応じて利用料を払う、従量課金のコンピューティング環境です。“Red Dog”は、Microsoft のインフラ上のストレージやホスティング環境を従量課金で使えるようにし、開発者が(Microsoft のクラウドが持つパワーを生かして)柔軟にクラウド サービスやアプリケーションを開発できるようにします。
特徴をまとめると以下のようになります(参考「LiveSide.net: Red Dog: Ray Ozzie's answer to the Google App Engine?」)。
・効率的な仮想化環境
・完全自動化されたサービス管理システム(※Google App Engineのように運用面は気にしなくてよい)
・高いスケーラビリティを持つストレージ サービス(必要な容量だけを利用する形態)
・サービスは Microsoft のデータセンターにある何百万台のマシンにスケールアウト可能
・インターネット サービスとアプリケーションの迅速な開発、展開、メンテナンスのための最高のプラットフォームとして、今後の市場をリードしていく
・来年にはバージョン1が提供される(かも)
ここで気になるのは「ソフトウェア+サービス」(software-plus-services)との関係でしょうが、当然“Red Dog”も、「ソフトウェア+サービス」アプローチの一環として進められています。今後の情報システムのあり方は以下のような3種類に分類できると思いますが、一極集中は行き過ぎた考え方であり、バランスのとれたハイブリッド型が浸透していく可能性が高いのではないでしょうか。
・企業ベースの(アプリケーション)ソフトウェア
・ソフトウェア+サービスのハイブリッド
・完全なクラウド サービス
現実的には、Googleは比重をクラウドに置いたハイブリッドを進めており、Microsoft は比重をソフトウェアに置いたハイブリッドを推進しているととらえた方がよいと思います。
「おや、Googleはクラウド一点なんじゃないの?」という意見が多数あると思いますが、Google 自身も Web アプリケーションをデスクトップで使えるようにする Google Gears(と Google Chrome )などを提供することで、Web アプリケーションの限界を超えようとしています(Google Gearsにより、Webアプリはデスクトップ アプリになります)。Adobe については AIR で、というように、いまはWebテクノロジの方からデスクトップに歩み寄るようになっているのが現実。それらを見ると、結局はWebとデスクトップの長所をうまく利用しようとするのが今後の情報システムの方向性で、それにクラウド寄りか (Google の立場)、ソフトウェア寄りか (Microsoft の立場) という違いがあるだけだと思います。
【参考資料】
LiveSide.net: Red Dog: Ray Ozzie's answer to the Google App Engine?